独り暮らしをしていた時のお話です。
お勤めをしていれば、毎月頂けるお給料もそう変化はありません。
家賃や食費などの必要経費がどのぐらい掛かって、自由に使える分はこのぐらい、ということは把握していますから、「足りなくてお金を借りる」なんてだらしなさ過ぎるんじゃない?と思っていました。
だけど実際に社会人として生活してみると、思いがけない出費ってありますよね。
まずは交際費。
忘年会や送別会費、職場や友人関係を円滑にするために、ちょっとした挨拶品、贈り物。
ましてや結婚式にお呼ばれでもすると、祝福の気持ちとは裏腹に、一気に大出費の痛手はなかなかのもの。
こちらもそういう機会には着飾って、新しい出会いを期待しますから、ご祝儀は当然、ヘアメイク、ドレス代も結構かけてしまうのです。
それまではボーナスを「贅沢する、大きな買い物をするための資金」とあてにしていたのですが、私の場合は交際費がどんどん食い込んでしまいました。
だけど実際にお金を借りてしまったのは、新しい趣味にのめり込んだからです。
友達に誘われて、発表会を見に行ったフラ。
それが、かなり大きな大会を兼ねていて、先生クラスの上級者の演技ときたら、素晴らしいものだったのです。
映画「フラガール」のタヒチアンタイプとはちょっと違い、もっとゆったりと、凛とした声奏楽入る古典フラです。
ゆったりとしたリズムで、詠唱する声や身体全体、指先・顔の表情など全てで表現される精神性、祈りの美しさ。
たちまち虜になって、友達と同じスクールに通う事になりました。
・・・ご想像がつくと思いますが、近所の学習センターなどで中高年の方々がやっている健康づくりとは違います。
毎月の授業料もなかなかのものでしたし、衣装や装具なども、一定の基準にのっとった本物を求められます。
また、当時ショートだった髪もそのままでは許されず、長髪のかつらを被らないと練習さえさせて貰えない、という厳しいものでした。
古典フラって、宗教的な意味の強い古典演芸なんですね。
あてにしていたボーナスも半分以上無くなっていましたし、泣く泣く借金しました。
銀行のカードローンです。
利率は高いけど怖くない、という意味で。
完済するまで一年以上かかりましたが、夢中になってフラに没頭できたあの当時の楽しさと、その時知り合った人間関係はそれ以上の価値あるものでした。
借金がどんどん増えてゆく、というのでない限り、健全な趣味にお金をかけるのはアリじゃないかなと思っています。
新しいことを始める楽しさ。プライスレス、じゃありませんよね。